以前ミシュラン一つ星を獲得し、現在はゴーミヨに掲載され続けているリストランテ il Pregio。普段はチャイルドコードがありなかなか訪店できないが、岩坪シェフの計らいで、極々たまに貸切ファミリーディナーを設けて頂いている。極上の鴨と出会えるこの時期はワクワク感が止まらない。
まずは恒例の泡でのスタッフの皆様との乾杯で幕開ける。今宵はいつものフランチャコルタではなく、シャンパーニュのアンド・レクルエをチョイスした。ピノノアール100%の濃厚さが口の中に広ったかと思えば、フラワーアロマを纏ったキメの細かい泡で瞬く間に口溶ける、極上の味わいだ。
本日のお品書きに目を落とすと、自ずと口が綻んでくる。脂の乗った寒鰆の旨みを見事に閉じ込めた炙りの一品に、プリップリでボリューミーな白子のムニエル、そしてスペシャリテのカボチャとフォアグラと続く。すかさずシャトー・グランピュイ・ラコストを抜栓しデキャンタージュをリクエスト。
濃厚でいて軽やかなアンティパスト三銃士と、マグロのカラスミで化粧したハンドメイドのトロフィエパスタ。スモーキーで力強いタンニンをカシスアロマで包み込むポイヤックのお値打ちワインがハーモナイズし、メインの前にまさかの2本をボトムアップ。
新鮮で芳醇で美しいまでの紅色をした肉厚のシャラン鴨が運ばれた。いよいよ真打の登場だ。その凝縮した旨味と溢れる香りは火入れの極意の成せる技か。つい”To have or not to have, that is the question”とハムレットを口遊む。すると髙橋ソムリエがさりげなく1本をテーブルに。目をやるとシャトー・ネナンのエチケット。しかも2005年のグレートビンテージだ。本日2回目のデキャンタージュで勝負あり。
芳醇なアロマとシルキーなタンニン、それでいて頑強なボディを醸し出すポムロールの優等生と、エトフェをフランスで唯一許可されたビュルゴー家のシャラン鴨。この上ないマリアージュに舌鼓し、至極の時を暫し堪能した。
締めのドルチェは四万十栗とマスカルポーネのジェラートだ。甘味と酸味が口の中で螺旋のように交差する、至福のディナーのプロローグにはもってこいの一品に、最後も笑みで締めくくる。
気が付けば、あっという間の2時間半。美味しい時間は幸せだ。
P.S. お子様向けにはステーキでもパスタでも、お子様の好みに合わせて料理して頂けます。ご家族のセレブレーションディナーに是非お試し下さい。