長年、宮崎シェフの元、ミシュラン1つ星を取り続けていたリッツカールトン東京のフレンチ、Azure 45が、2024年2月1日よりフランスで日本人初のミシュラン3つ星を獲得し続けている小林圭シェフによるフレンチ Héritage by Kei Kobayashiとなることを受け、移行期の12月1日にAzure 45 by KEIを、そして2月17日にHéritageを訪問し、料理のクオリティ、ビジュアル、そしてサーバーやソムリエのサービサビリティについて調査した。
移行期とのこともあってか、インテリア、食器・カトラリー類、ワインリストに関しては従前のAzure 45とあまり変わらない印象。サーバーやソムリエもフレンドリーでカジュアルな接客で、慣れ親しんだAzureの心地よさであった。ただ料理に関しては、小林圭シェフ監修のもと、料理長の村島シェフが本店KEIの息吹を料理に注ぎ込んでいて、2月の本格展開に向け胸の高鳴りを覚えた。
訪れた瞬間、全てが別世界であった。重厚感のある空間と奥ゆかしさの中にも凛とした自信漲る笑顔で出迎えるスタッフの面々。乾杯ドリンクのオーダー時に、ワイン好きと見るや、すかさず本店同様の黒いクロコダイル革で覆われた重厚なワインリストを差し出すあたり、洗練されたサービスを予感させた。
伝統と革新の融合、異素材の組み合わせが織りなす味と香りの複雑な絡み合い、そしてソースとのマリアージュ。前菜2種からWメイン、そしてフロマージュを挟んでのデザートまで、五感を圧倒的に刺激する秀逸な料理の数々。聞けば、できる限り本店と同じ料理を提供しているとのこと。しばしパリへの時空旅行を愉しんだ。
ワインのセレクションも素晴らしく、ブルゴーニュの充実はさることながら、ボルドーも数は少ないなれど、玄人好みの銘柄が多く用意されていた。加えてカリフォルニアワインも赤、白ともになかなかのもので、ボルドーラバーも思わず微笑むラインナップであった。
ミシュラン星付き店との比較は少々酷かもしれないが、及第点の味とサービス、そして一品一品を作り上げる上での素材選びから異素材との融合からのソースとのマリアージュ、そして皿に盛られたビジュアルプレゼンテーション。“こだわり”と“ものがたり”が紡ぐハーモニーこそが、Ritz Carlton Waikiki Beachのフレンチとイタリアンに必要ではないかと強く感じた、2店訪問調査であった。